大判例

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東京高等裁判所 昭和33年(ネ)1615号 判決

被控訴人が昭和二三年二月頃控訴人に対し被控訴人所有の東京都板橋区板橋町六丁目三、四〇三番地五所在家屋番号同町五二二番木造瓦葺二階建居宅一棟建坪一二坪一合九勺二階七坪二合五勺を期間の定なく賃貸し控訴人が現に家を占有中であること、及び被控訴人が昭和三二年六月一一日控訴人に対し右賃貸借契約解除の意思表示をしたことは当事者間に争がない。

被控訴人は右解除の理由として控訴人は昭和三〇年六月頃峯島寿々子に対し右建物階下六畳および五畳各一間を、また日時不詳ではあるが中丈慶雄に対し階上の一部をそれぞれ転貸して使用収益せしめたと主張し、控訴人はこれを争うのである。よつて判断するに、原審における控訴本人及び当審証人峯島知子矢部とし(後記措信しない部分を除く)の各供述を総合すれば、控訴人は昭和三〇年七月頃峯島寿々子に対し右建物中二階六畳間と三畳間とを賃料と水道ガス料金を含め一ケ月二、七〇〇円をもつて賃貸したが、同年末控訴人夫婦が目黒区下目黒一丁目一一五番地天勝寮にて生活するに至つた後、控訴人は峯島より二階右二間の明渡を受けその代りとして峯島に階下六畳間と四畳半間とを従前と同一の約定で賃貸し居住せしめたことが明らかであつて、当審における証人峯島知子の供述中右認定と矛盾する部分は措信せず、その他右認定を左右するに足りる証拠はない。そして原審における控訴本人及び当審における証人矢部としの各供述によれば、控訴人は昭和三一年頃中丈慶雄に本件建物二階三畳間を貸して同人にこれを使用せしめ謝礼を受領したことが認められ、当審における証人峯島知子の供述によるも右認定を左右するに足りない。

つぎに右転貸は被控訴人の承諾を得たものか否かにつき判断するに、この点に関する当審における証人矢部としの供述は原審における被控訴本人の供述に照して措信し難く、その他転貸について承諾を得たとの事実を認むるに足る証拠はない。

しかして賃借人が賃貸人に無断で賃借物を第三者に転貸した場合であつても右転貸をもつて賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない特段の事情あるときは無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除は許されないものと解せられるところ、本件にあつてはかゝる特段の事情を認め得るかを考えるに控訴人が峯島寿々子に右転貸をするに至つたのは、控訴人の息女洋子と峯島寿々子の息女知子とが学校友達であつて、控訴人が峯島一家の住居なきに同情したに起因することは、当審証人峯島知子及び矢部としの供述により認め得るけれども、前記認定の各事実に照すときは到底かかる特段の事情ありと認めるに足りないから、結局被控訴人の右解除の意思表示はその効力を生じ控訴人は右解除にもとずき被控訴人に右建物を明渡すべきである。

(松田 猪俣 沖野)

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